スキー・スノーボードウェアの選び方1:レイヤリング(重ね着)の基本


はじめに

スキー・スノボを新たに始める時、最近ではキレイなウェアをレンタルしてくれるスキー場も多いですから、昔と違って必ずしも買う必要はないかもしれません。

しかし、そうはいっても板やボードはレンタルするとしても、ウェアぐらいは揃えたいと思う人も多いかと思います。また、何がレンタルウェアとして出てくるかは未だギャンブル状態ですから、ウェアだけは初心者でも買ってしまったほうが良いと思います。。

もっとも、ブランドもたくさんあり、同じブランドの中でも高い物から安いものまで無数にあり、初心者はどう選べばよいかもわからなかったりします。

そこで、初心者に向けてスキー・スノボウェアの選び方を説明したいと思います。

なお、全部書くと記事が長くなるので、複数回に分けて書きます。

その1:レイヤリング(重ね着)の基本←今回
その2:アウター(ジャケットとパンツ)編
その3:ミッドレイヤー(中間着)編
その4:インナー(肌着)編

まず、今回は、ウェア選びの前提となるレイヤリング、すなわち重ね着の基本について説明します。

レイヤリングとは

レイヤリングとは、直訳すれば重ね着のことなのですが、アウトドアの世界においてなされる重ね着というのは、寒いので2枚3枚重ね着するといった適当なものではありません。

寒い中で運動して汗をかくといった複雑な状況の中で、重ね着の各層の役割を考えて、保温性と運動時の快適性を両立できるように、戦略的に重ね着をする考え方のことをレイヤリングと言います。

多くの場合、レイヤーはアウター・ミッドレイヤー・ベースレイヤー(インナー)といった3層に分けます。

ミッドレイヤーに複数着ることは多く、各レイヤーでウェア1枚ということはないのですが、ここではエベレスト登山とか南極横断とかではなくゲレンデレベルでの話をしており、本州のゲレンデであれば、よほど荒れない限り、各レイヤー1枚の3枚のウェアでどこのゲレンデも切り抜けられると思うので、各レイヤー1枚の前提で話をします。

そういう意味では、登山時のように、リュックに多様なウェアを入れておいて、状況に応じて着たり脱いだりして調節するという方法は取らない前提です(せいぜい春スキーでミッドレイヤーを脱ぐくらい)。

それでは、各レイヤーの役割を見ていきます。

アウターの役割

アウターは、スポーツメーカーが出している場合には、単純にスキージャケットなんて言われますが、アウトドア系ブランドが出しているものは、通常ハードシェルと呼ばれます(ソフトシェルもあるのですが、防水性が低く、天候によってウェアを変える達人以外、スキー・スノーボードでは着ないのが通常です)。

なお、最近はスキー・スノボード利用を考慮して、ハードシェルではなく、スノージャケットという名前で製品を出しているアウトドアブランドも多いです。

ハードシェルというのは、アウトドア用品店に行って手に取ってみれば分かるのですが、レインコートのパワーアップ版的なものです。そして、街中で着るような暖かいダウンコートに比べて、薄手のものが多いです。しかし、それだと、寒いような気がしますが、果たしてなぜそういった製品が主流なのでしょうか。

それは、雪場でのレイヤリング思想における、ハードシェル着用の最大の目的は、体と外界の境界を維持すること、つまり、雨、雪、風といったもののウェア内側への侵入を防ぐことだからです。

風や水がウェアの中に入ってくると、何枚重ね着して暖かくしても保温性は期待できませんし、なにより雪が侵入してくると、ウェアが徐々に湿って来て、不快なだけでなく体温が奪われていくことになります。

その反面、雪や風をしっかりアウターレベルでシャットアウトすれば、後はアウターで密閉された内側で重ね着したりして温度調節すればよいわけです。逆に言うと、重ね着して暖かくした上に、防風・防水ジャケットを着て、保温性を維持するわけです。

それが、雪場でのレイヤリングにおけるアウターの役目です。

もっとも、外側からの防水性と防風性が高ければそれでよいのかというと、ここで、透湿性という指標が出てきます。この透湿性こそがある意味レイヤリングという考えの肝です。

レインコートを着て歩いて、雨には濡れなくても、動いているうちに汗びっしょりになった経験は誰でもあると思います。

ゴムやビニールのような素材のジャケットを着れば、防風防水は完璧ですが、内側の水分が一切外に排出されないので、汗をかくと汗がたまっていき内側がムレて、どんどん不快になります。

レインコート着て歩くだけでそうなりますから、ましてやその状態で運動すると大変なことになります。

そして、汗の水分でウェアが湿ってしまえば何枚重ね着しようと無意味で、ウェアに水分がたまり汗冷えで体もどんどん冷えていきます。

つまり、アウトドアウェアにおいては、透湿性、すなわちウェア内側の汗をいかに外に排出するかが重要になってきます。

したがって、外側からの水は防ぎつつも内側からの水蒸気は通す、透湿性という性能も必要になってきます。

以上、アウターにおいては、防水性と防風性が一番重要となりますが、外側の雪や雨は侵入できないけど、内側の汗は排出するという透湿性といった性能が重要になってきます。

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ミッドレイヤーの役割

ミッドレイヤーとは、アウターの内側に着るフリースとかダウンのことで、ハードシェル着用によって、外界から遮断された内側で体を保温するのが主な目的・機能です。

ハードシェルは防水防風とはいえ外界にさらされ冷たくなります。

そして、その外気のもつ冷気から体温を守るためには、熱伝導性の低いウェアを着るのが一番です。

では、真空ボトルのように、中が真空のステンレスを着るのは無理だとしても、着用可能なもので一番熱伝導率が低い素材は何でしょうか。

実は、それは空気なのです。空気の熱伝導性というのは、どんな繊維素材よりも、約十分の一以下の熱伝導率となります。したがって、体温によって温められた体の近くの空気が、外気によって冷えるのを防ごうとした時、いかなる繊維を身に着けるよりも空気を身にまとう方が効率的となります。

もっとも、空気を身にまとうにはどうすればよいのでしょうか。

そこで、登場するのが、フリースとかダウンです。

フリースやダウンというのは、極細の繊維が絡まった構造をしているので、その中に空気が閉じ込められて、中々その空気が移動しません。

つまり、フリースやダウンを着ると、あの繊維素材そのものが暖かいというよりは、フリースやダウンの中に空気が保持されて、体の周りに空気の壁ができるから暖かいわけです。

防風・防水ジャケットで外界からの風や雪の侵入を防いだら、その内側のミッドレイヤーでは、暖かい素材のウェアを着るのが通常です。

もっとも、アウターによって密閉されている状況ですから、あまり暖かすぎるものを着ると、運動時には汗がたまっていくことになります。

これもアウターと同じで、ミッドレイヤーに暖かいものを着るのは当然としても、厚手すぎずなるべく汗を放出する能力(透湿性)の高いものを着ることが重要となってきます。

ベースレイヤーの役割

いわゆるインナーとか下着のことです。

ベースレイヤーの最大の特徴は肌に直接触れる点です。

そして、アウターとミッドレイヤーで守られていれば体は保温されますが、その分汗もかきます。

もちろんインナーの機能を考えた時に、保温性も重要なのですが、体から出る汗の処理が重要となってきます。

この汗の処理こそが厄介で、この機能が低いと素材の持つ保温性というのは台無しになります。

例えば、綿100%のシャツなどは、肌触りは良いし暖かいのですが、速乾性が低いので、運動時などは、徐々に汗でインナーが湿っていき、最初は暖かくとも、次第に体温も奪われ、素材の持つ保温性なんてあってないような状況となります。

つまり、保温性も大事なのですが、それを生かすためにも汗を吸収してすぐに乾く速乾性こそがインナーの肝となります。

この点、ヒートテックなどのような日常生活を想定したインナーというのは、速乾性が高いと広告では謳っていたりしますが、それは日常生活レベルの汗を想定した場合であって、運動時の汗は想定していませんから、なるべくアウトドア・スポーツ用の吸汗・速乾性の高い、機能性インナーを着るのがお勧めです。

まとめ

以上のように、レイヤリングというのは、一見難しそうですが、考えてみるとシンプルで納得のいくものだと思います。

まず、アウターで防風・防水を実現して、内側に密閉空間を作ります。

そして、ミッドレイヤーとして、暖かい素材のウェアを着ます。

ベースレイヤーでは、肌から排出される汗がたまらないように、出た汗をすぐに吸収して外部に放出するウェアを着るのが重要です。

なお、ベースレイヤーが汗を吸収して水蒸気として放出しても、ミッドレイヤーやアウターで止まってしまっては、重ね着が台無しになってしまいますから、アウターやミッドレイヤーでも速乾性を意識して、厚手過ぎず、透湿性の高いものが理想です。

終わりに

今回の記事では、ウェアを選ぶ前提としてレイヤリングの基本を説明しました。

ゲレンデレベルにおいてはこの程度の理解でよいかと思います。

次回以降は、各層の具体的な選び方を見ていきたいと思います。

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アウター(ジャケットとパンツ)編

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