スキーやスノーボードのホットワックス入門


はじめに

スキーやスノーボードを購入した方で滑る前にスプレータイプやペーストタイプのワックスを塗っている方も多いかと思います。

そして、本当はホットワックスといって、固形のワックスをアイロンで溶かして塗り込むやり方の方が良いとは聞きつつも、ハードルが高くて及び腰の方も多いかと思います。

とは言え、気になる方も多いと思うので、ホットワックスの理屈や利点に触れながら、ホットワクシングとは一体何をするのかを解説したいと思います。

ホットワックスの目的

ホットワックスの目的としては大きく下記の二つあります。

1.滑走性能を上げる
2.スキーやスノーボードを保護する

1番目の滑走性能を上げるというのはそのままで、一言で言えば、滑走で傷がついたり経年劣化で毛羽だったりしたソール面(板の裏面のこと)にワックスを塗って摩擦抵抗を減らすことでスキーやスノーボードがよく滑るようになります。

2番目のスキー板やスノーボードの保護もシンプルで、ソール面がむき出しよりもワックスを塗ることで滑走時には傷つきにくくなり、また、保管時には空気に直接触れるのを避けることで、ソール面の酸化を防止します。

この2つがホットワックスの目的です。

簡易ワックスとの違い

吹きかけるスプレータイプや塗るだけのペーストタイプとホットワックスの違いは多き二つあります。

1.ワックスが長持ち
2.簡易タイプは板の保護にならない

2つありますが、本質的には同じものです。

ホットワックスにおいて、なぜ固形のワックスをアイロンの熱で溶かして塗り込むかというと、ソール面にはミクロレベルでは隙間がたくさんあり、そこにワックスを浸透させるためです。

滑るとソール面と雪面の摩擦でどうしてもワックスというのははがれていくのですが、低温では固体のワックスを温めて液体にしてしっかり浸透させることで、剥がれにくくなり、ワックスが長持ちするようになります。

雪面と接するのはソールの表面ですから、簡易ワックスでも滑走性能はあまり変わらないと言えます。

しかし、液体状で塗りやすいワックスはその分はがれやすく、半日も持たずに滑走性能が落ちてしまいます。

これが、簡易ワックスとホットワックスの違い。

2つ目の板の保護にならないというのは、理由は1つ目と同じで、簡易ワックスの場合ははがれやすいので板の保護になりません。

特に、板の保護という場合、シーズン終わりには、ホットワックスの場合は厚く塗っておくことが出来るのに対し、簡易ワックスではそういう使い方自体することができません。

以上がホットワックスと簡易ワックスの違いです。

ホットワックスの手順

まず、さらっと概要を解説し、その後個々のプロセスについて簡単に補足します。

大きく分けて3ステップです。

1.ソール面のクリーニングをしてワックスを塗り込む前提として汚れを落とす
2.アイロンでワックスを塗り込む
3.スクレ―ピング&ブラッシングで余分なワックスを取り除き磨く

この3ステップは不変なのですが、最初のクリーニングと最後のブラッシングをどこまでやるかが、プロによるチューンナップとレジャーレベルの違いとなります。

これは、文章で見るより、下記の動画を見た方が早いと思います。

クリーニング

ワクシング

以下では、理屈を考慮しながら手順を少し細かく見ていきます。

手順1:クリーニング

ホットワックスの前のクリーニングは通常下記の2ステップで、2ステップというのは、物理的な掃除と化学的な掃除の2種類ということです。

1.専用クリーナーをキッチンペーパーとかにつけて汚れを落とす。
2.粗目の金属製ブラシでブラッシングして汚れを取り除く

面倒な方はどちらか一方で済ませることが多く、ブラシは高いので、クリーナーで表面の汚れを取るだけという人が多いかもしれません(ブラシは1個3,000円くらいしてそろえると結構な負担になります)。

とはいえ、床のワックスがけと同じで、汚れた面にワックスを塗り込むのはナンセンスなので、ワックスメーカーやプロのメカニックなどには、このクリーニングのプロセスこそ一番大事なんだよという人もいます。

なお、クリーニング用のブラシは金属製ブラシが一般的ですが、金属製なら何でもいいわけではなく粗目の硬いものを使い、金属製でも柔らかめの物はワックス後のブラッシングで使います。

なお、もっと面倒なやり方としてクリーニングワックスを使ってホットクリーニングという方法があります。

これは、粘性の高いワックスを、アイロンで溶かしてソールに塗り込み、乾く前に、ワックスが汚れを吸着した状態でスクレーパーというプラスチックの板で削り、ワックスを汚れごと取ってしまうという方法。

下記で紹介されています。

なお、この場合に使うワックスは、理屈的には粘性が高いワックスであればいいので、専用のクリーニングワックスという製品もありますが、ガリウムの白ワックス(商品名はBASE WAX)などで代用できます。

手順2:アイロンでワックスを塗り込む

正確には塗り込むというよりソール素材のミクロレベルの隙間に熱で溶かしたワックスを浸透させます。

このやり方は動画を見た方が早いです。

まず、ソールにポタポタたらして、それをアイロンで塗り込みます。

ここで、アイロンを同じ場所に押し当て続けると熱でソールがだめになりますので、アイロンを動かし続けるのが重要です。

また、ワクシングペーパーを使うかどうかは好みの問題で、海外のワクシング解説動画では、ほぼ100%ワクシングペーパーは使用していませんが、実際に使ってみると汚れを吸着してくれるので、私は使います(ガリウムの言うとおりにやれば問題ないと信じているので)。

手順3:スクレ―ピング&ブラッシング

これが実はややこしいです。

スクレ―ピングは分かりやすくで、ワックスが冷めて固まった後は、ソール面にワックスがべっちょりついていて、ホットワクシングでやりたいことはソール内部へのワックスの浸透であり、表面にワックスがべっとり付着していても仕方がないので、スクレーパーというプラスチックの板でワックスを削ります。

そして、その後はブラッシングします。

ブラッシングの最初が少し厄介で、ボアブラシもしくは中目(柔らかめ)の金属ブラシを使います。

これは何かというと、ワックスを取り除くためです。

せっかく塗ったワックスを取り除くとはわけわかりませんが、これはスキーやスノーボードの表面のストラクチャー構造というものに由来します。

ソール面が鏡面のように真っ平だと、ソールと雪の摩擦熱で溶けた水がソール面にべっちょり引っ付いてかえってスキーやボードの滑りが悪くなります。

そこでストラクチャー構造といって、ミクロレベルでは凸凹させて水はけを良くしています。

素材そのものの結晶レベルの隙間ではなく、構造上の凸凹の特に凹の隙間にワックスが詰まっていると、せっかくのストラクチャー構造の意味が薄れてしまうので、そこからワックスを掻き出す必要があります。

そのため、ボアブラシなどの比較的硬めで、素材表面上のワックスは取り除くけど浸透して固まったワックスを削り取ってしまうほどには強くないブラシでストラクチャー内部のワックスを掻き出すわけです。

ブラッシングというと革靴のクリームを塗った後のブラッシングのようにワックスをならす目的と勘違いしてしまいそうですが、表面を磨くのは後半の2番目以降のブラッシングで、まずはストラクチャー内部のワックスを掻き出す必要があります。

ボアブラシ(もしくは柔らかめの金属ブラシ)でストラクチャー内部のワックスの掻き出しが終わったら次はナイロンブラシが登場します。

ナイロンブラシは、結構硬いブラシなのでワックスを掻き出す能力もあるのですが(ボアブラシより効率性は落ちます)、先端が平らなため、残ったワックスを掻き出しつつもソール面を磨く効果があります(ワックスの掻き出しと靴磨きの中間)。

次に、登場するのが馬毛ブラシで、これは柔らかいブラシなのですが、ソール表面には掻き出したワックスのカスが飛び散っているのでそれらを取り除き、表面を滑らかに仕上げるブラシです。

ここで、3種類もブラッシングをするのは面倒ですから、初心者を中心にスクレ―ピング後のブラッシングはナイロンだけで十分かという疑問があるのですが、その答えは、ナイロンブラシでボアブラシの代用は不可能ではないが効率性が落ちるということになります。

ナイロンブラシでもストラクチャー内部のワックスを掻き出せますが、ナイロンよりも細くて弾力のあるボアブラシの方が掻き出すのに適しているというだけです。

マツモトワックスは、ナイロンブラシと馬毛ブラシの2つの製品展開。

必要な道具

ここではホットワックスをするのに必要な道具を説明します。

スタンド&シート

ホット枠すをかける場合、ワックスを塗り込むまでは簡単なのですが、ブラッシングで結構体重をかけて行うので、腰くらいの高さのスタンドが無いとかなり腰に負担がかかります。

また、大量のワックスのカスが散乱するので、ブルーシートを敷いて行うのがおすすめです。

クリーニンググッズ

クリーニングをフルに行うには下記の3つが必要です。

1.クリーナー&キッチンペーパー
2.粗目のブロンズブラシ
3.クリーニングワックス

もっとも、3つ全部やるのは大変なので、個人的には上の番号が優先順位かなと思います。

ワクシンググッズ

ワックスを塗り込む過程では1下の3つが必要になります。

1.固形ワックス
2.専用アイロン
3.ワクシングペーパー

なお、ワクシングペーパーは必要派と不要派に分かれ、海外の方では使っている方はほとんどいないようですが、使うと汚れが取れるのでお勧めです(個人的に、使った方が塗りやすくなるとか焼け付きしにくいとかは結構怪しい気がします)。

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ワックスの選び方

なお、ワックスについては、まずはガリウムの白がおすすめです。

柔らかくて塗りやすいので、まずはこれで慣れてから他の製品を試せばよいと思います。雪質ごとに最適なワックスは変わりますが、どんなワックスであれ、塗った結果かえって滑らなくなったなんてことにはなりません。

個人的には、本州であれば、かなりざっくりですが、1月2月はガリウムの紫、3月以降はピンクでいいと思います。

その反面、マツモトワックスのANT BBは個人的に初心者にはお勧めしません。ワックスの性能が問題なのではなく(良いワックスです)、塗りにくいので、ホットワックス初心者は、まず柔らかいワックスで慣れてからがいいと思います。

なお、フッ素入りは撥水性が高いので、水滴がソール面にべっちょりとくっつくのを抑え、特に春スキーで効果を発揮します。

その反面、はがれやすいので、ソールにいきなり塗るのではなく、フッ素なしのパラフィンワックスをベースワックスとして塗ってからその上に塗ります。

なお、ベースワックスという言葉は、フッ素入りワックスを塗るための下地という意味で、通常はフッ素なしのパラフィンワックスを意味します。

その反面、フッ素なしのパラフィンワックスだけでも十分滑りますし、「パラフィンワックスというのはベースワックスだからそれだけ塗っても滑らない」というのは間違いです。

単に、フッ素入りワックスははがれやすいのでまず下地としてベースワックスを塗るのですが、雪面と接しない下地にフッ素が入っていても仕方がないので、フッ素なしパラフィンワックスを使うというだけで、すなわち、ベースワックスというのは機能の説明であり、ワックス製品が、滑らないベースワックス用のワックスと滑る滑走ワックス用のワックスに分かれているわけではありません。

スクレ―ピング

ワックスを塗り込んで冷ましたらその後はスクレ―ピングでソール面の余分なワックスを取り除きます。

必要なグッズは下記のとおりです。

1.スクレーパー
2.スクレーパーシャープナー

ブラッシング

スクレ―ピングが終わったらブラッシングで、まずは硬めのブラシでストラクチャー内部のワックスを掻き出し、その後は徐々に柔らかめのブラシに変えて、余分なワックスを取り除く→表面を磨くという方向にスライドしていきます。

最後は細目のファイバーテックスでワックスカスを取り除いて終了です。

1.ボアブラシ
2.ナイロンブラシ
3.馬毛ブラシ
4.細目ファイバーテックス

なお、上述しましたが、ブラシを全部そろえるのは出費が激しいですし、また、3回もブラッシングをするのは面倒だという人は、ナイロンブラシと細目ファイバーテックスだけでなんとかなります。

ホットワックスセット

ホットワックスセットはいろいろ出ていますがおすすめは下記の2つです。

なお、両方ともスクレーパーシャープナーが入っていないのでこれは別途必要かと思います。

また、ワクシングスタンドもないと腰にかなりきます。

ガリウムのセット

フル手順で出来るように全てのグッズが入っていて非常にお得なのですが、入っているブラシなどがミニサイズなのは難点。ミニサイズだと効率が悪い反面ブラシは買いなおすと高いので、そこが悩みどころ。

SWIXのセット

いわゆる最小構成のセットですが、ミニサイズとかではなく通常の商品の詰め合わせなので、これに合わせて追加購入していくのが良いです。なお、ワクシングになれるまでは、何処行くかはさておき、やわらかいCH8を塗るのがおすすめです。

おわりに

ホットワックスについて初心者向けに解説してみました。

ご参考になれば幸いです。

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