スキー・スノーボードウェアの選び方4:インナー(肌着)編


はじめに

今回の記事では、前回に続いて、インナー、すなわち肌の上に直接着るシャツとタイツについて説明します。

その1:レイヤリング(重ね着)の基本
その2:アウター(ジャケットとパンツ)編
その3:ミッドレイヤー(中間着)編
その4:インナー編(肌着)←今回

デザイン

インナーについては、人前にさらす場面はほとんどありませんから、機能よりもデザインを優先するという人はいないでしょう。

もっとも、機能性のインナーの多くは、ややコンプレッション気味(体にぴったりとフィットし着圧が高い)のものが最近は多いですから、レビューサイト等でサイズ感だけでなく体型的な特徴を調べるのが重要かと思います。

求められる機能

吸汗速乾性

インナーに求められる最大の役割は汗の放出です。

汗がでる肌に直接触れるのがインナーですから、汗をタイムリーに放出して体温を一定に保つとともに、ウェア内部を快適に保つことが一番重要な役割です。

吸汗速乾性がないインナーを着てしまうと、休んでいる時は快適でも、動くと同時に汗がインナーにたまっていき、ウェア内部は非常に不快になっていきます。

それどころか、ウェア内部に水分が一定以上溜まっていくと、汗冷えと言われる状況が生じ、時間の経過とともに体温が徐々に奪われる結果となります。

気温の変わる、朝・昼・夕や標高の高低差を同じウェアで乗り切ろうとするスキーやスノーボードにおいて、必ず汗をかく場面が出てきますが、それがそのままウェア内部にたまることだけは避ける必要があります。

したがって、インナーにおいては吸汗速乾性が最も重視されます。

保温性

もちろん、冬山では、インナーにも暖かい物、すなわち保温性が求められます。

しかし、保温性はミッドレイヤーやアウターで補完できますが、速乾性に関しては、肌に一番近いところで汗がたまっていくと、上に何枚きたところで汗の処理はどうしようもなくなります。

したがって、インナーにおいては吸汗速乾性が保温性よりも優先となります。

特に、日常生活と運動時では、出る汗の量が違いますから、日常生活レベルではなく、スポーツ・アウトドアレベルでの汗を想定したインナーを着用する必要があります。

吸汗速乾性と保温性

吸汗速乾性と保温性というのは相反関係にあるので注意が必要です。つまり、保温性を高めると吸汗速乾性が下がるという関係があります。

吸汗性というのは、繊維内部の隙間が毛細管現象で液体の汗を吸い上げる能力ですから、吸い上げて逆側に行けばそのまま汗は放出されるわけで、吸汗性と速乾性はセットです。吸汗性の高い繊維は速乾性も高いです。

そして、保温性には、吸湿性という指標が重要になってきます。

吸湿性というのは、繊維素材自体がどれだけ水分子と親和性があるかの指標で、吸汗性とは異なる指標です。

吸湿性が高いと、繊維が水分を保持しやすい反面、汗は吸収するけどそのまま保持されてしまうので、速乾性は低いと言えます。

一方で、分子レベルで繊維と水がくっつくと水和熱が発生しますから、吸湿性が高い素材はそのまま水和熱が高い素材と言え、それは保温性の高い素材と言えます。

つまり、保温性を高めようとすると吸湿性をあげることになるのですが、それはそのまま速乾性を下げることになるわけです。

逆に、速乾性を高めたウェアは、水との親和性がほとんどない石油由来の化学繊維をメイン素材としますから、水和熱はあまり発生せず、あれこれ工夫するのですが、ウール等の吸湿性の高い繊維ほどに保温性は高くありません。

保温性も速乾性も高い魔法の繊維があればよいのですが、現実では、どちらかを優先せざるを得ないわけです。

日常防寒インナーは避ける

ユニクロのヒートテックやイオンのピースフィットなどは、日常生活を想定していてスポーツ時のような大量の汗が出る状況を想定していませんから、速乾性を下げて保温性を優先しています。

ユニクロのヒートテックなどは、レーヨンが大量に入っていて、レーヨンというのは水との親和性が非常に高い繊維なので、体から出る少量の汗を吸って水和熱が発生するので非常に暖かいのですが、一定以上汗をかくとどんどん水分がたまっていくことになります。

したがって、日常生活はさておき、着用して運動すると暖かいので大量の汗がでますが、それらを処理するだけの速乾性を備えていないのでびっしょりになってきて、不快なだけでなく汗冷えの原因となります。

スキーやスノーボードの時も、昼間は結構汗をかいたりしますから、快適性を考えれば、日常生活用ではなくスポーツ・アウトドア用の吸汗速乾性の高いインナーがお勧めです。

ウールについて

汗がさけられないアウトドアやスポーツ時には、吸汗速乾性を高めたインナーを着た方が良いと上では説明しました。

しかし、アウトドアブランドでは、ウール素材(特にメリノウール)のインナーというのは最高級モデルの一つとして扱われています。

ウールの特徴は、吸湿性(水との親和性)が非常に高いので、水和熱が大きく保温性に優れている点にあります。しかし、上述したように、吸湿性が高いと速乾性が低いので汗冷えの原因となります。

にもかかわらずウールがなぜ好まれるかというと、ウールは繊維の独特の形状により、吸収された水分が直接肌に触れない結果、汗冷えしにくいからです。

もっとも、そうはいっても速乾性はないに等しいので、比較的汗冷えしにくいというだけで、ウェア自体はびしょびしょにはなり快適性には欠けます。

では、なぜアウトドア用品の最高級品扱いを受けるかというと、とにかく暖かいからです。

極寒地での過酷な冬山登山などにおいては、快適性も大事ですがなにより保温性が重要だからこそ、ウールが好まれるわけです。

この点、ゲレンデでのスキーやスノーボードでは、寒いとは言えウール素材のインナーが想定するほどには寒くありませんので、通常の吸汗速乾性をメインとしつつも保温性を高めた化学繊維のインナーウェアで十分かと思います。

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具体的な確認ポイント

コンプレッション

インナーの一番の役割が体から出る汗を吸ってタイムリーに放出することだとすると、ウェアと肌の間にあまり隙間がなく、ウェアが密着している方が良いことになります。

また、ウェアが裏起毛素材の場合、ウェアと肌が密着していると、起毛の部分に保持された暖かい空気が移動しづらい分、保温性が高く暖かくなります。

したがって、コンプレッションウェアというのは、吸汗速乾性と保温性の両方において効果的なウェアと言えます。

しかし、コンプレッションが強いタイプは、ウェアが人を選ぶというか、着る人の体型を選びますので、自分の体型に合ったものを着ることが重要です。

素材

素材に関しては、まず、アウトドアやスポーツに使用することを考えるのであれば、コットン(綿)やレーヨンが含まれているものは避けた方が良いと言えます。

コットンとレーヨンはいずれも水との親和性が高いので、保温性を高める反面、速乾性が下がり、汗をかくとどんどん発熱して次第にびっしょりになります。

したがって、ナイロン、ポリエルテル、ポリウレタンのような、吸湿性が無いもしくはほとんど無い素材をつかって、吸汗速乾性を優先しつつも、裏起毛等で保温性を高めたウェアがおすすめとなります。

メリノウール素材も根強いファンがいて、保温性は非常に高いのですが、上述したように速乾性が今一つで、ゲレンデでのスキーやスノーボードでは、極寒地使用のものほどの保温性は不要ですから、あえて選ばなくても良いかと思います。

おすすめ

機能性インナーは無数にあってどれも甲乙つけたいのですが、迷ったら有名どころの鉄板商品がおすすめです。

まずはみんな大好きアンダーアーマーのコールドギア。スポーツブランドということもあり、アウトドアマニアの中には良くないという人も多かったりしますが、実際に着てみるとわかるように、ものすごく暖かくてしかも速乾性が高いです。寒がりや冷え性の人には一番おすすめ。個人的な印象で唯一の欠点は、機能性を追求し過ぎている結果バリバリの化学繊維感の肌ざわりな点。暖かくて速乾性も高く、非常に快適なのですが、日常生活でも着ようという気にはならない着心地です。

次におすすめは、ウィンタースポーツブランドの最大手であるPhenixのOutlastシリーズ。私の愛用品で、ヘビーウェイトであれば十分暖かいですし、この手の製品の中では着心地が一番いいと思います(全部試したことがあるわけではないですが)。

まとめ

スキーやスノーボード時のインナーにおいて一番重要な機能は吸汗速乾性となります。

保温性も重要ですが、保温性を高めることは必然的に速乾性が下がることになるため、ヒートテックのように保温性を優先して速乾性を下げたウェアではなく、アウトドア・スポーツ用の速乾性重視のインナーがお勧めです。

素材としては、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、及びそれらの混紡がおすすめで、吸湿性の高いレーヨンやコットンが含まれているものは避けた方が良いでしょう。

また、自分の体にフィットするインナーを着れば、吸汗速乾性と保温性が共に高まります。

終わりに

今回はスキー・スノーボードウェアの選び方その4として、インナーの選び方を説明しました。

昨今、機能性インナーは大流行りで、その数も無数にあり、レビューも無数にあります。

しかし、ゲレンデレベルでは、アウターにスノージャケット、ミッドレイヤーに機能性フリースを着ておけば、極寒地用の最高級インナーを着なくても十分乗り切れるので、暖かさにそこまでこだわる必要はないかもしれません。

その一方で吸汗速乾性の高いものを1枚持っておくと、1泊2日くらい1枚で乗り切れるので楽です。

参考になれば幸いです。

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